祖母の遺骨

祖母が亡くなったのは、自分が小学生のころだった。
葬式のときは、祖母が亡くなった悲しみよりも、盆と正月にしか会うことのない従兄弟たちと会えて、楽しさの方が上回っていた。葬式の会場となったお寺は子供の目で見れば、大きな遊技場のようなもので、通夜のあと、大人がお酒を飲みながら、食事をしているとき、その目を盗んで従兄弟7人とかくれんぼをしたり、鬼ごっこをしたりして遊んだ。
本堂から別な建物へと繋がる長い木の廊下を走ると、片側にある白いカーテンが揺れ、中でカタカタ音がした。そんなことはお構いなしに、走り回っていたら、お寺の役員のようなおじさんに怒られた。
「ここには仏さんがたくさん眠っているから静かにしなさい。言うことを聞かないと仏さんが起きてくるぞ」
そして、おじさんが白いカーテンをめくると、壁一面が骨壺だった。
びっくりして、その廊下で遊ぶのはやめた。
祖母は今で言うエンディングノートの書き方講座の様なものを見ていろいろと残していたのか、葬儀は滞りなく進んだ。
翌日、本葬が終わると、火葬場へバスに乗って、みんなで向かった。白木の棺桶が火葬用の扉の奥に吸い込まれると、また待ち時間で、従兄弟たちと遊んだ。火葬場の待合室には、やっぱり酒や食事が用意されていて、子どもたちはサイダーを飲んで、巻き寿司やいなり寿司を食べた。
そして、火葬が終わった合図があって、みんなで火葬場に戻ると、そこには小さく人型に白い骨が並んでいた。
その祖母の骨を割り箸で、大人たちが拾い、子どもたちにも箸から箸へと渡してきた。
そのとき初めて、祖母も骨壺に入って、あのお寺の廊下に並ぶのかなと思ったら、悲しくなってきた。
それからお寺で遊んだ記憶はないけど、祖母のお骨は、廊下ではなく、先祖代々の墓に納められたのだった。

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